「質問通告」について(危機管理の視点から)

 議員の品格について書くと予告したんですが、気が変わりまして(笑)、ここ数日のニュースで感じたことを少し。

 「危機管理」という観点から見た場合、自民党の対応には、国民民主党にくらべて、一日の長どころか百年の長があるように思います。最近の自民党の失点といえば、菅原前経産大臣の不祥事と萩生田文科大臣の「身の丈にあった」という失言です。対応のスピードを比べてみましょう。

菅原前大臣:週刊文春の初報が10月10日
                                      → 辞任(事実上の更迭)が25日(足かけ16日)
萩生田大臣:BS放送での発言が10月24日

                                      → 陳謝が28日(足かけ5日)
森ゆうこ氏:通告遅れが10月11日~12日

                                       → 継続・拡大中

 不祥事型の危機管理の定石は、
①まず、正確な事実関係の把握に全力を挙げる。
②事実関係が確定するまで、調査中である旨をアナウンスし、情報発信を止める
③調査の上、認めるべき失態を認めて陳謝する、必要があれば関係者を処分
の3ステップと言えます。

    これらを可能な限り短期間で行うのです。ただし、事実関係の調査に落ち度があってはいけません。事実関係で訂正が生じた場合、隠蔽を疑われ、事態の悪化・長期化を招くことになります。

 菅原前大臣の場合、特に香典の問題が確定したところで迅速な判断が下されたものと思われます。

 萩生田大臣の場合、事実関係は初めから明らかですから、「まずい」と思った時点で早々に陳謝を行ったのでしょう。

 森ゆうこ氏の場合、
 ①については、玉木代表が次のように述べておられます。

 事実関係の確定に動いていることがうかがわれます。これは定石通り。

 ②については、党の代表が報告を約束しているにもかかわらず、16日に原口一博氏(国民民主党国対委員長)等が記者会見を開き、「情報漏洩の問題だ」と称して追及チームを立ち上げると発表してしまいました。

 この段階で、危機管理の定石(事実関係を確定するまで、情報発信を止める)から外れるとともに、論点を「通告の遅れ」という(謝ればすむ)単純なものから、「情報漏洩」「質問権の侵害」へとすり替えていったために、事態の早期収拾を不可能にし、騒動を継続、拡散させるという絵に描いたような悪手になってしまいました。また、このように組織の代表(玉木氏)を露骨に軽んじる行為は、騒動本体とともに、国民民主党に期待する無党派の穏健保守層の支持を減じていくボディーブローとなるでしょう。

 玉木氏と原口氏双方に対する信用が毀損されつつあります。原口さんのような立派な方がどうしてこういう行動に出たのか、多くの人が首をかしげていますが、私もその一人です。原口さんにとっての森氏が、前原さんにとっての永田寿康氏のようなものにならなければよいのですが、そうなりつつある観が…

 ところで、サンデー毎日(2019年10月29日)には、森ゆうこ氏と、森氏とタッグを組んでいると見られる毎日新聞専門編集委員の倉重篤郎氏の対談が掲載されています。冒頭のみネットで見られますが、菅原大臣辞任についての倉重氏の見立てが振るっています。

 菅原一秀経産相の贈答疑惑による辞任で安倍政権が揺らぐなか、もう一つの事件が参院で進行中だ。森ゆうこ参院議員の質問通告漏洩問題である。…菅原一秀氏が選挙区贈答疑惑でスピード辞任した。野党の追及にもうもたないとの政権中枢の判断だ。「文春砲」の決定打があったとはいえ、この国会で統一会派を組んだ野党からすると、戦闘能力強化の成果と言えなくもない

 いやいや、だからこれは(文春砲の威力と)国民民主党の何倍も上手の自民党の危機管理能力を示す事例であって、よりによって森さんが偉そうに論じられるテーマじゃないですよ。森さん自身が萩生田氏のようにスパッと謝るか、玉木さん、原口さんが安倍さんのように患部をスパッと切り捨てるかできればこんなことにはならなかったんだけどなぁ。

 こういう危機管理が下手糞という視点から、かの大震災や原発事故を思い起こすと、当時の政権党が民主党だったのは「不幸中の幸い」ならぬ、「不幸中の不幸」だったということでしょうか。総理が野田さんだったら、まだ違っていたようにも思いますが。


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 ちなみに、故永田氏のお名前を出すに際し、いくつかのサイトを閲覧したところ、こんな記事を見つけました。

     「偽メール事件」の永田議員の自殺について - ダメダメ家庭の目次録 - Medium

   永田氏のお父上がここでの推察のように行動されたのかはともかく、子を持つ親として深く考えさせられる記事でした。